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Katada
Laboratory
of
Catalysis




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丹羽研究室
~2011. 3

鳥取大学

大学院工学研究科

応用化学講座

     Course of Applied Chemistry
Department of Chemistry and Biotechnology
Graduate School of Engineering
Tottori University

鳥取大学 大学院工学研究科 化学・生物応用工学専攻 応用化学講座
片田研究室
     [Japanese] [English]
触媒キャラクタリゼーションラボ

 高校以上で化学を学んだ人は,Friedel-Crafts反応というのを聞いたことがあるでしょう.ベンゼン環に側鎖を導入し,有機化合物の骨格構造を作ることができる,極めて有用な反応です.ふつうの教科書には,この反応の触媒はAlCl3だと書いてあります.たとえばベンゼンとプロピレン(IUPAC名プロペン)からクメン[イソプロピルベンゼン,または(1-メチルエチル)ベンゼン]をつくるときに使われます.高校の教科書に出てくるフェノール製造のための「クメン法」で,環境に優しい方法だと習いましたね・・・・ところが,問題があります.実際の反応では,液体の原料を溶媒に混ぜ,AlCl3を溶かして反応させます.H2SO4が使われることもあります.反応するときに触媒が溶けており,反応物と均一な系内にあるので,そのような状態にある触媒を「均一系触媒」と呼びます.

 このような反応を大規模に実施するには問題があります.反応が終わった後,溶媒の中に目的生成物と触媒が溶けており,簡単には分離できません.有機化合物同士はたいてい蒸留で分離できるのですが,触媒が入っていると加熱によって副反応が起き,望ましくない生成物ができてしまいます.このような混合物にNaOH水溶液を加えると油層と水層が分かれ,油層に生成物(と,普通は溶媒)が,水層に触媒とNaOHが中和した廃塩が含まれるので,分離できます.水層には,理論的にはNaCl, NaAlO2,Na2SO4など塩類が含まれるのみで,海水や温泉のような成分しか含まれないことになりますから,捨ててもよいですね・・・・ちょっと待ってください.有害な成分が多少なりとも含まれますから,捨てたら環境汚染,無害化処理をすればエネルギーの浪費でCO2増加と,いずれにしても環境に有害です.それだけでなく,反応のたびに新しい触媒を消費し,NaOHまで消費します.このような資源を得るためにさらにエネルギーが消費され,環境も汚されます.つまるところ,溶ける触媒は環境負荷が大きいのです.昔は見逃されてきた均一系触媒反応も,しだいに実施が困難になってきています.

 さて,もし固体の表面に酸のはたらきをする酸点があったら・・・・酸点を表面に持つ固体を固体酸といい,触媒として用いられる場合には固体酸触媒といいます.パイプの中に固体酸触媒を詰め,入口から反応物(例えばプロピレンとベンゼン)を入れると出口からクメンのみが出てきます.固体触媒を使うと,手品のような,完全に無害な工場が実現できます.クメンの製造は既に固体酸触媒(ゼオライト)を使って行われており,均一系触媒の固体触媒での置き換えはいろいろな分野で強く求められています.ノーベル賞で話題になったSuzuki-Miyaura反応では,均一系の有機Pd錯体が触媒として用いられています.この場合には有害な触媒成分が製品に残存するのが問題となっています.このような問題も固体触媒によって解決できます.

このような触媒を,直接の環境触媒([ここ]参照)に対して「間接環境触媒」と呼ぶことがあります.